2021/04/09 10:59

 成果向上型人事制度の導入の効果測定の結果をお知らせします。

1.効果測定の項目と方法
 研修効果を測定する方法に「カークパトリックの4レベルフレームワーク」という考え方がある。簡単に言うと、研修の効果を把握するにはレベルが4段階あり、そのレベルに応じた測定方法があるというもので、その4つのレベルを要約すると次のようになる。

 これを新人事制度の導入にあてはめて考えてみると次のようになる。

 したがって、具体的な測定方法として次のようなものが考えられる。

2.実際の測定結果
 成果向上型人事制度を導入した会社がすべてその効果測定を行っているわけではないが、レベル1、2については、多くの回答が寄せられている。
レベル3については、効果はあっても具体的には測定できないケースが多いようである。
レベル4については、小規模な企業においては顕著に効果が出ているようである。

レベル1の測定結果
 新人事制度導入後のアンケート結果はほとんどの場合、「新制度を導入してよかった」と回答している。その理由は次の通りである。
制度の仕組みがオープンになって安心した。
評価結果をフィードバックしてもらえるのがよい。
面接で上司と話す機会が増えたのでよかった。
評価の項目や基準が事前に分かっているので目安ができた。
もちろん不満の声もあるが、制度導入に対する批判ではなく、今後よりうまく運用するための意見である。
評価が本当に正しく行われているのか不安だ。上司はもっと勉強してほしい。
目標設定が大変だ。目標の難設定が難しい。

レベル2の測定結果
 導入当初から、管理職や経営者からの次のような意見が出ている。ただし、これは導入する前の状態がどうであったかにもよるであろう。
通信教育の受講が飛躍的に増えた。
ミーティングや会話の中で、いままで社員から聞かれなかったような言葉、例えば「指導、経費節減、会社方針」などの言葉が頻繁に出るようになった。
よく遅刻していた社員が遅刻しなくなった。挨拶の声が大きくなった。
他人への協力を嫌がっていた人が、協力するようになった。
残業が減った。ムダな残業がなくなったようだ。
来社した常連客から、「雰囲気が明るくなりましたね」と言われた。 

レベル3の測定結果
 効率やコストを考えて仕事をするようになり、そのための工夫や能力向上が見られるという回答があった。
今まで4人で行っていた職場を、欠員を機会に3人で行うようになった。今までは補充を求めたが、新制度導入後は自分たちで工夫するので大丈夫と言ってきた。
今まで嫌がっていた難易度の高い仕事を進んで引き受けるようになり、仕事もうまくこなすようになった。
同じ量の仕事を今までよりは早く終了するようになり、「次は何をしましょうか」と頻繁に聞いてくるようになった。

レベル4の測定結果
 大手企業においては、業績に関しては色々な要因があるため判断しにくく、また、データそのものが機密のために回答が得られないが、50人以下の企業においてはいくつか回答が寄せられている。
新制度を導入した1年半後から労働分配率が大きく改善した。(72%→66%)
新制度導入直後に2名退職したが、その後、3年経つが不意の退職者出ていない。定着率が大幅によくなった。
経営環境の悪化で売り上げが大幅に低下したが、賃金カットに社員が協力してくれて、何とか乗り越えそうである。以前は反目していた。
新しい設備を入れたわけではないのに、一人当の生産量、および人件費一万円当の生産量が伸びた。

3.効果測定の限界
 企業である以上、利益の増大に結びつくことが一番であると考えられるが、利益というのは人事制度以外の要因によって決まる割合が高いため、単純に利益が上がった・下がったという判断はできないであろう。
 その利益に結びつく労働生産性や労働分配率であれば、もちろんこれも他の要因が影響するが、人事制度による影響も大きいのではないかと考えられる。
ただ、これも導入前の状況がどうであったかによる。もともと高い水準であれば、制度導入によってもそう変わらないだろうし、低い水準であれば、ちょっとした他の要因でも改善することがある。

 最近の成果主義の反省点と同じで、結果や業績だけの評価でなく、意識や行動の変化に着目して効果を考えた方がよいのではないだろうか。
すなわち、育成型人事制度とおなじく、意識や能力・行動がよければ高い成果に結びつく、という考えで、ステップ2・3を重視した方がよいと考える。